千の風に吹かれて

公開日 2007年01月05日

 新井満の「千の風に吹かれて」が昨年話題になっていた。訳詩ではあるが、その出典には、諸説があり、読み人知らず、unknownと表記してある作品も多い。アイルランドの24歳のテロに斃れた青年の手紙、遺書の中にある詩という説とユダヤ系アメリカ人女性が作詩したという説があり、後者が有力視されている。前者は後者の詩を引用したものである可能性が高い。

 原作者が誰であるかということよりも、やはり作品、そのものの持つメッセージが私たちの胸をうち、心を揺さぶるのである。有限の命を生きる私たちにとって、死と別離は不可避なのだ。この世の中の悲しみで、大事な人との別れほど、悲哀に満ちたものはない。人は自然の一部であり、自然そのものの構成要素の1つなのだ。ゆえに、ひと死ぬ。それが自然の摂理であり、そのようにして、ひとは進化の道を辿ってきたのである。

 生まれ、生き、そして死ぬ。人類は無限ともいえる時間の中で生きているのである。人は死ぬことによって、永遠に生きることができるのである。個体としての人の死が、腫としての人の生存を可能としてるのである。人の生は人の死の上に保障されているのだ。つまり、生と死の等価性がここに存在している。
換言すれば、生と死は連続性があるのである。

 愛するひとや大事なひとを喪失した悲しみを癒すのは時の流れなのです。
必然としてのひとの死を真摯に受容することもまた、あなたの心を癒すのに必要なのです。
そして、その悲しみを乗り越えたひとだけが、真に人を愛し、今を生きているのだと思います。

 この詩を繰り返し、読んでください。そして、声に出し、朗読してください。
「千の風」になって、自然を映像化して、この詩を朗読してください。
それだけの価値のある詩です。

原詩 Unknown版

A THOUSAND WINDS

    Do not stand at my grave and weep,
    I am not there, I do not sleep.

    I am a thousand winds that blow,
    I am the diamond glints on snow,
    I am the sunlight on ripened grain,
    I am the gentle autumn's rain.

    When you awake in the morning hush,
    I am the swift uplifting rush
    of quiet in circled flight.
    I am the soft star that shines at night.

    Do not stand at my grave and cry.
    I am not there, I did not die.

         (Author Unknown)

千の風

    私のお墓の前に立って、涙を流すのはやめてください
    私は、そこにはいないのですから
    私は、眠ってなんかいないのですから

    私は、千の風になって吹き渡っています
    私は、雪の日にはダイヤモンドダストとなってきらめいています
    私は、太陽の光となって豊穣の穀物を照らしています
    私は、秋には穏やかな雨となって降り注いでいます

    あなたが、朝のしじまのなかで目覚めるとき
    私は、鳥になって、静寂の帳(とばり)を空高く舞い上げています
    そして、夜には優しい星となって輝いています

    だからどうか
    私のお墓の前に立って、泣くのはやめてください
    私は、そこにはいないのですから
    私は、死んでなんかいないのですから

              ワシモ(WaShimo)訳 

原詩 1932年 メアリー・フライ

Do not stand at my greave and weep
Words by Mary Frye


Do not stand at my grave and weep
I am not there, I do not sleep
I am in a thousand winds that blow
I am the softly falling snow
I am the gentle showers of rain
I am the fields of ripening grain
I am in the morning hush
I am in the graceful rush
Of beautiful birds in circling flight
I am the starshine of the night
I am in the flowers that bloom
I am in a quiet room
I am in the birds that sing
I am in the each lovely thing
Do not stand at my grave and cry
I am not there I do not die